顔すら知らない相手にだって、真心は伝わるもの。
憧れの街・ロンドンの古書店にへレーヌが送ったのは
クリスマスのご馳走用のハム。
Story
ニューヨークで劇作家として暮らすへレーヌは大の英文学好き。
古本屋を巡っても欲しい本が手に入らないへレーヌは、新聞広告でイギリスの古書店の存在を知る。
読みたい本のリストを添えて手紙をだすと、すぐに注文通りの本と返事が送られてきて大喜びのへレーヌ。
本の代金と次の注文を書いて送るへレーヌと、律儀に返事をしたためる書店員・フランクの交流は続いていき-。
戦後間もないニューヨークで劇作家としての夢を追うへレーヌは、貧しさをものともせず逞しく生きてきました。
気の置けない友人に恵まれ、ジントニックとタバコを愛し、何よりもイギリスの文学作品を愛する本の虫なのです。
ある日新聞広告で見つけたイギリスの古書店「マークス&コーエン社」に手紙を出して、絶版本を安価で購入出来るかと尋ねます。
アメリカの古書は高い!安価でも汚れていない美しい装丁の本が良い!とストレートに希望を伝えたへレーヌ。
ある朝イギリスから届いた本は、飛び上がるほど素晴らしく期待以上のものでした。
良心的な価格と、丁寧な返信の言葉に大喜びするへレーヌ。
早速次の注文とともに、本が届いた喜びをしたためた手紙を出すのでした。
注文の多いへレーヌに応えるのは、温厚で心から本を愛する書店員のフランク。
気に入らないものにはかなりの毒舌でクレームを入れるへレーヌですが、対するフランクはまさしく紳士的。
へレーヌの好みをすっかり把握して、手頃な価格の古本を見繕ってくれるようになりました。
へレーヌからの注文とウィットに富んだ手紙を心待ちにしているフランクに、同僚たちも興味津々。
そんなフランクたちが暮らすイギリスでは戦時中から続く食糧難で、配給制という不自由を強いられていました。
事情を知ったへレーヌは友人の力を借りて、食べ物を送ってあげることに。
最初にへレーヌが送ったのは、クリスマスのご馳走用のハム。
野菜や卵、イギリス人の好きなラズベリーも送ろう!とへレーヌは大はしゃぎでカタログから商品を選びます。
書店の店名から、ユダヤ系の方にコーシャではない物を送ってしまったかも!と気を揉んでみたりと、気配りも完璧。
フランクを含めた書店員たちは驚きつつも、箱の開封にワクワク。
思いがけないプレゼントを分け合ってそれぞれが家に持ち帰り、幸せなクリスマスを過ごすことができました。
それ以降、へレーヌは本の注文とともに季節の行事毎にたくさんの食糧を送り、返信は書店員の他の面々からも届くようになりました。
手紙のやり取りさえ簡単ではなかった時代の、海を越えた心温まる交流。
面識がなくても、思いやりさえあれば心を通わせることが出来るのだと教えてくれる素敵なシーンでした。