どれだけおしゃべりに花が咲いても、手元の包丁はテキパキと。
エレーナが自分のお葬式用に準備したのは
友達と仲良く作るカニサラダ。
Story
ロシアの小さな村で教師として働いてきたエレーナ。
心臓に問題があり余命がわずかだと医師に告げられる。
ある日家で倒れて死を身近に感じたエレーナだが、身内は都会で忙しく働く息子のオレクだけ。
息子に迷惑はかけられないと、エレーナは自分のお葬式の準備に取り掛かる-。
ささやかでも参列者たちをきちんともてなせるお葬式にしたいと願ったエレーナ。
いくつか問題はあったものの事務手続きを早めに済ませて、棺桶も手押し車とバスで調達しました。
お墓の区画も決めて穴を掘ってもらい、満足げなエレーナ。
近所に住む友人のリューダの孫・パーシャに頼み、バイクのサイドカーに乗せてもらって食料品の買い物へ。
山ほど買い込んだ食材を片付けようとしていると、ドアがノックされます。
やって来たのはリューダと2人の女友達。
エレーナの不審な行動を聞きつけ、もしやと思い押しかけて来たようです。
友達なのに教えてくれないなんて!とリューダはカンカン。
それでもエレーナの思いに理解を示す友人たちは、エレーナのお葬式のためのご馳走を作る手伝いをしてくれるのでした。
エレーナたちが準備していたのは、ロシアで定番のカニサラダ。
ジャガイモをメインに角切りの野菜・カニカマ・ゆで卵にコーンなどをマヨネーズで味付けした、彩り豊かなサラダです。
テーブルを囲んでおしゃべりをしながら、手際よくニンジンの皮を剥き、ジャガイモを切っていく女たち。
仲良くまな板を並べて夫の話で盛り上がるシーンは、歳を重ねたからこそ持てる穏やかさに満ちた、平穏で優しいものでした。
そのほかにエレーナが用意していたのは、ビーツの色が鮮やかなヴィネグレットサラダや、モチモチと美味しいクレープ・ブリヌイなど。
お酒はもちろん、ウォッカで!とロシアの定番のご馳走がテーブルにずらりと並びます。
テーブルに並べられた食器や大きなボウル、ホーロー鍋なども全て上品でいて愛らしく、エレーナらしいお洒落なものばかり。
悲嘆に暮れるものではなく、しみじみと和やかなお葬式。
人生を肯定して悔いなく生きてきたエレーナだからこその心配りと言えるでしょう。
ところでカニカマって日本で発明された食べ物だって知っていましたか?
発明元には諸説あるものの、昭和40年代に完成して普及していき、今では世界中で食べられている立派な”日本食”なんです。
タラのすり身で出来ていることは今や常識ですが、当初は本物のカニから出来ていると信じていた人がたくさんいたとか。
食べ方のバリエーションは豊富ですが、ロシアではカニサラダとして定番食となりました。
簡単でたくさん作ることが出来るカニサラダ、一度挑戦してみてください!