作品情報
ミザリー(原題 Misery)
監督 ロブ・ライナー
出演 ジェームズ・カーン キャシー・ベイツ 他
公開 1990年
上映時間 108分
猛吹雪の中で事故に遭った小説家と、彼を救ったファンの女性との緊迫の数週間を描いた作品。
作品中に出てくる小説「ミザリー」の内容が気になる人は原作をチェック。
◇アカデミー賞を受賞したキャシー・ベイツの怪演
原作は泣く子も黙るスティーブン・キングの1987年刊行の小説「ミザリー(原題:Misery)」。
アニーを演じたキャシー・ベイツは1990年アカデミー賞主演女優賞に輝いた。
「プリティ・ウーマン」のジュリア・ロバーツや「ハリウッドにくちづけ」のメリル・ストリープを抑えての堂々の受賞。
そりゃそうだろうよ。そりゃもう怖かったもの。
小さい頃にテレビ放送で何気なく観ていたら、怖すぎて釘づけになってしまったのを覚えてる。
あまりに怖くてなぜか笑えてきたことも。
月日がずいぶん流れて、小さい時の記憶と大人になった今ではきっと感想も変わるだろうなぁと期待して再観賞。
「やだ怖い///」から「恐ろしい…!!」に変化したくらいで、やっぱり笑えるくらい怖かった。
原作者のスティーブン・キングもお気に召したというくらいだから、それはもうパーフェクトな怪演だったと言っていいはず。
親切で頼り甲斐のある人に助けられた…と思いきや、発作的な怒りを見せるアニーにビクつくポール。
生死をさまよい、満身創痍のポールを助けてくれたはずのアニーが、この状況を逆手にとって自分を監禁してしまうなんて知る由もない。
ポール役のジェームズ・カーンもまた素晴らしく、怪我と恐怖で為すすべもなく動きを制限された姿を見事に演じた。
急にキレる人からちょっとした事で怒り狂う人へと化けの皮が剥がれるまでに、そう時間はかからなかったアニー。
初めこそ取り繕っていたものの、ポールが抵抗しないのを良いことにどんどん暴走していく。
最初は介抱してくれてた怪我の部分を狙いだすのだから、医療人を敵に回すと恐ろしい。
私のペットなの!ミザリーちゃん!なんて唐突にペットの子豚を機嫌よく紹介されるシーンも無駄に深読みしてしまって恐ろしい。
家のあちこちに飾られた可愛らしい置き物たちですらもうセンスが恐ろしい。
TVを見ながらスナック菓子とコーラを貪るダラけた姿のアニーもなぜか恐ろしい。
恐ろしい役を演じるのに、奇抜なメイクや演出は必要ないのだとしみじみ思わされた。
再鑑賞以降、キャシーさまが大好きになった。
◇ホラー映画史上ナンバーワンヒロイン(?)の作る食事とは
肩は外れ、足は複雑骨折と死線をさまよったポール。
体を拭いてヒゲを剃り、点滴もしてくれたアニーは、もちろんご飯だって用意してくれた。
手が動かせないポールにスープを口元まで運ぶ甲斐甲斐しさを見せたものの、その直後癇癪が炸裂してしまったアニー。
以降手が治ってきたポールは、ベッドに食事を運んでもらって1人でポツンと食べていた。
侘しいシーンではあるものの、いつキレるかわからないアニーとの食事よりはきっとマシだっただろう。
そしていつも飲まされていた薬を飲まずに溜め込み、アニーに盛ってやろうと企むポール。
今夜は一緒に食べようと誘われたアニーは大いに喜んで、ミートローフとワインを用意する。
ポールはなんとかアニーのワインに薬を混ぜたが、アニーがグラスを倒してしまいあえなく惨敗。
食事を褒められて「生のトマトを使うのよ!」なんて作り方のコツを披露していたけど、アニーはもしかして料理好きなんだろうか?
ホラー映画に出てくる食事は大体サンドイッチ程度だと思っていたけど、そこはやはりナンバーワンヒロインのアニー。
規格外に料理も得意で包丁も似合う、どの角度からでも最恐であることを見せつけてくれた。
◇伝説のおしおきシーン
ホラー映画って怖がらせるよりただひたすらグロい、なんてことが多かったりする。
その点「ミザリー」は容赦なく、ただひたすら怖い。
アニーが出掛けたのを見計らって家の中を探索し、武器になりそうなアイテムを手元に隠すポール。
うっかり落としたペンギンの置物を逆向きに置いてしまったばっかりに、部屋を脱出していたことがアニーにバレてしまう。
お仕置きしなきゃ…!と心に決めたアニーは、ポールをベッドに文字通り縛り付ける。
そして丁寧にこれから起きることと、どうしてそんな目を合うのかを説明しながら、粛々と罰を与える準備を進める。
殺される!と怯えるポールにわざわざ「殺さないわよ///」と親切な断りを入れてからの巨大ハンマーシーン。
原作では足とお別れする描写だったことから、一応映画版では衝撃度を和らげようとしてくれたのかもしれない。
いやいや、和らいでないけど。
パツーンと切られてしまうより、固定されハンマーで叩き折られる方が絵的にとても痛いし怖い。
それは親切に殺さない宣言をされた上、死ぬほど痛い目に遭わされ、かつ死ぬこともできないという痛みのせいか。
事故で複雑骨折した足を見事に固定してくれたアニーが、わざわざ治りかけた足首にハンマーをフルスイングしたせいか。
なんにせよただ痛いだけでなく、ハンマーを降ろしたアニーが「愛してる」と虚ろな目でつぶやくあたりは、まさに血も凍りそうな境地。
ホラー映画は星の数ほどあるけれど、何度見ても怖い怖いと言えるのは「ミザリー」だけじゃないだろうか。
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