「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」について

「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」について

作品情報

タイトル「シェフ 三ツ星フードトラック始めました(原題 Chef)」

監督 ジョン・ファヴロー

出演 ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、オリヴァー・プラット、エムジェイ・アンソニー、ロバート・ダウニー・Jr他

公開 2014年 アメリカ

上映時間 115分

一流レストランをクビになったシェフが、フードトラックで人生を取り戻していく爽快グルメ・コメディ。

お腹が空くので深夜の視聴には要注意。

◇美味しい映画のキャストたち

グルメ映画はスカッと爽快、底抜けに陽気なのが良い。

見終わった後に、出てきた食べ物が絶対食べたくなるようなものならもっと良いし、本作なら爽快・陽気でお腹も減る。

キューバ・サンドのフードトラックが近所に来てくれないかな!とどれだけ願ったことか。

カールは一流のシェフだが流行に疎い仕事人間で、あまり会えない息子さえろくに構ってやれない。

ある日使い慣れないツイッターのおかげで店をクビになる事態を招き、崖っぷちに。

元妻・イネズの思惑に乗せられ、フードトラックで移動販売をすることになったカールは、看板メニューとしてキューバサンドを作ることになる。

夏休みの間フードトラックを手伝いたいと言う息子のパーシーと、元同僚で親友のマーティンの3人でマイアミからのスタート。

かくしてとびきり美味しいキューバ・サンドをひっさげたアメリカ横断の旅が始まる。

頑張ったらちゃんと報われるんだぜ!っというメッセージもあり、親子の絆を取り戻す話でもあり。

ジョン・ファブローがシェフの元に弟子入りし、監督・脚本・演出・主演をやり遂げた思い入れの深い作品。

この映画をきっかけにNetflixオリジナル作品「ザ・シェフ・ショー 〜だから料理は楽しい!〜」まで製作するほど、料理にハマっているようだ。

監督が弟子入りしたのは実際にフードトラックで成功を収めたシェフのロイ・チョイ。

まさに映画の主人公・カールのような人生を歩んできたロイとの出会いは「ザ・シェフ・ショー」でも語られている。

とにかく美味しい物が好きなんだ!料理を作りたいんだ!という思いが登場するメニュー全てに投影されていて、ワクワクするカットばかり。

ロバート・ダウニー・Jr.やスカーレット・ヨハンソン、ダスティン・ホフマンまで監督の人脈が活かされたキャストも豪華。

カールの天敵の評論家役に、同年ドラマ「FARGO」でも活躍したオリヴァー・プラット。

カールがクビになり後釜に収まったシェフ役に、ドラマ「マスター・オブ・ゼロ」でもシェフ役を演じたボビー・カナヴェイル。

キャラクターにムダがなく、どのキャストもイキイキしていて、どこまでも美味しい映画なのだ。

◇仕事人・カールは料理を作らずにいられない

離婚して週末にしか会えない息子といても、仕事のことしか頭にないカール。

夫・父親としては残念なカールだったが、パーシーにご飯を作ってあげる時には遺憾なく本領を発揮する。

3種類ものチーズを使った黄金のチーズ・サンドは、外はカリカリ・中はトロトロのパーフェクトな出来栄え。

パーシーも素直に「美味しい」の一言。

翌日はカリカリのベーコンとハッシュブラウンに目玉焼き、という嬉しい朝食。

仕事一筋で余裕のないカールと、本当はもっと一緒に過ごす時間がほしいパーシー。

だけどこんな美味しそうなご飯が毎回出てくるなら、ちょっと許してしまいそう。

エンドロールにチーズサンドの焼き方の指導シーンがあったからか、チーズサンドにチャレンジした人が多かったらしい。

次にチャレンジ率が高かったのが、カールがモリーに作ったペペロンチーノ。

離婚したカールは同僚のモリーと一時いい関係に。

どういう経緯か「お友達のままでいましょう」となった2人だが、落ち込むカールを慰めるモリーという図で関係が再燃しかける。

結局踏みとどまったカールは、モリーのために何かご飯を作ってあげると申し出る。

料理を作ることが最大限の愛情表現であるところが、カールという料理人としてしか生きられない男の全てを表している気がする。

カールの作ったペペロンチーノを、モリーが恐ろしくセクシーな表情で食べてくれるのだけど、このシーンが断トツで評判が良かったそうだ。

ひどい批評をした評論家を挑発し、新作メニューを食べさせるからお店に来い!と戦線布告したカール。

意気込んで準備をしていたが、お店のオーナーのリーバからいつも通りのメニューを出すよう命じられて猛反発、その場でクビを言い渡される。

カールが抜けた厨房は大混乱で、食べに来た評論家も以前と全く変わらないメニューを出されて唖然。

食材をどっさり抱えて帰宅したカールは、評論家に出すはずだったメニューをひたすら作り続けて鬱憤を晴らす。

喜怒哀楽の全てを料理にぶつける、というところがやっぱり料理人なのだと思わされるこのシーン。

カール渾身のメニューはエスニックな仕上がりで、デザートのベリー&クリームも本当に美味しそうなだけに、誰にも食べてもらえないのがもったいない!

◇いよいよ始動するフードトラックの看板メニュー、キューバ・サンドとは

失業した上、評論家への暴言が動画で世界中に拡散されてしまい、引き抜きの声もかからないカールはすっかり自信をなくしていた。

この状況をうまく利用したのは、もともとカールにフードトラック事業を勧めていた元妻のイネズ。

仕事を兼ねて父親の暮らすマイアミへ行く予定だったイネズは、カールに同行するよう頼む。

渋るカールに「仕事の間パーシーを見ててほしい、パーシーはパパと旅行に行けなくて傷ついてる」と言いくるめ、見事に成功。

カールをマイアミへ連れて行った上に、フードトラックが手に入るようイネズの前の夫であるマーヴィンに話しもつけてくれていた。

マイアミでミュージシャンとして活躍しているイネズの父と、一緒にレストランへ。

本場マイアミのキューバ・サンドの味に感激したカールは、これは売れると確信する。

厄介な性格のマーヴィンからフードトラックを譲り受け感謝するカールに、マーヴィンは「礼は見てから言ってくれ」と意味深。

カールの前に現れたフードトラックは見事にオンボロで、中には腐ったナニかが取り残されていた。

パーシーと共にフードトラックの大掃除をしていると、やってきたのは元同僚で親友のマーティン。

カールのために仕事を辞めて、助手として働くとわざわざマイアミへ来てくれたのだ。

テキパキと動くマーティンのおかげで作業も捗り、早速キューバ・サンド作りに取り掛かる。

この映画のメインであるキューバ・サンド、具材を挟んで焼くだけなんだけど、その中身が実に豪華。

オレンジジュースをベースにしたニンニク・オリーブオイルなどで作るモホ・ソース。

モホソースでマリネされたローストポークをメインに、ハム、チーズ、そしてピクルス。

ブレッドにたっぷりマスタードを塗ったら、これらの具材をガッツリ挟んで焼く。

焼くときには大量のバターをまんべんなく塗るのがポイントで、バターこそ美しい焼き色がつく秘訣である。

焼きたてのキューバ・サンドは香りもボリュームも申し分のない、人を笑顔にする幸せの味。

どの街を訪れても大行列、飛ぶように売れていくキューバ・サンドは、父と息子の絆を深めてくれる思い出深い味にもなったのだ。

楽しい映画が見たい時、何かに夢中になりたい時にうってつけの本作。

できればチーズサンドの準備をしてからの鑑賞をお勧めしたい。

デリシャスなシネマ「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」もあわせてどうぞ。

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