ノマドランド (Nomadland ’21 USA)

ファーンの強さを支えるのは
最低限であり合理的かつ素敵なもの。
アマゾンの工場で仲間と食べるランチは
バナナとピーナツバターのサンドイッチ。

Story

ネヴァダ州の大企業・USジプサムが閉鎖し、企業城下町であったエンパイアは無人の町となる。

住人だったファーンは荷物を最小限にしてバンに積み、車上生活を始める事になって-。

郵便番号すら抹消され、人々が去って行ってしまった町・エンパイア。

たくさんの思い出をもつ住人の1人だったファーンは単身バンに乗り込み、季節労働者として雇ってくれる場所を転々として生きることとなりました。

身分や肩書きさえも飲み込んでしまう不況の波。

病を抱えていても、高齢であってもバンやキャンピングカーで車上生活を余儀なくされている人たちは、決してファーンだけではありません。

各地を旅し続けるという覚悟をもった彼らは「ノマド」と呼ばれ、誰一人悲壮感のないタフな心の持ち主ばかり。

季節労働の働き口を求める彼らは非常に勤勉で、特別な絆で結ばれた仲間たちと絶妙なバランスを保ちながら支え合って暮らしているのでした。

車上生活を続ける上で必要な知恵を分け合うために集まり、共に食事をして焚き火を囲む人々の顔はどこまでも穏やか。

ファーンにもリンダ・メイやスワンキーなどの仲間ができ、お互いが思い描くこれからの未来を応援し合います。

ファーンが初めてリンダ・メイたちに出会ったのは、年末のアマゾンの工場で雇われた時のこと。

大きな工場にはたくさんの従業員や臨時雇いの人々がいて、ホリデーシーズンの大量の贈り物を仕分けしては梱包するという作業に明け暮れていました。

ファーンに仕事を教えてくれたリンダ・メイが、休憩室の大きなテーブルを囲んで仲間たちにファーンを紹介。

ザ・スミスの歌詞をタトゥーにしたという女性が”家とは心の中にある”という歌詞を教えてくれて、ファーンも感銘を受けているようでした。

休憩中にファーンが食べていたのは、ピーナッツバターのサンドイッチ。

バナナを輪切りにして挟んだサンドイッチの側には、小ぶりな青リンゴも置いてありました。

決して豪華ではないものの、ファーンの働くエネルギーを作り出すための効率の良い最適な食事。

この後も何度か登場するファーンの食べる姿には”食事を摂ること”の本来の意味が滲み出ているようで、胸を突かれるシーンばかりです。

本当に必要な物とは何か?自由とは?希望とは?というシンプルでいて重要な問いを投げかけてくれる素敵な作品。

本物の”タフネス”を味わえるシーンがぎゅっと詰め込まれていました。

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