他愛もない日常にこそ
天使を魅了する力がある。
ダミエルが憧れたのは
寒い日に飲む一杯のコーヒー。
Story
人には姿が見えないものの、いつだって人間をそばで見守ってきた天使たち。
人間に恋をした天使のダミエルは、自分も人間になりたいと願うようになって-。
いつも人間に寄り添い、心の声を聞いてくれていた天使たち。
時折勘の良い子供たちが微笑みかけたりするものの、人間の目には姿は見えず、ただ喜びや悲しみを見守ってくれる存在なのでした。
激動の歴史や変わり続ける街並み、人々の暮らしを見守り続けるものの、自身は変化と無縁で生き続けてきた天使たち。
ベルリンの街をカシエルと共に漂い続けてきたダミエルでしたが、自分も人間になることを望むようになります。
体の重さや色や匂いを「感じてみたい」と願うダミエル。
そんな時、ベルリンへ撮影のために来ていたピーター・フォークがダミエルの存在に気付き、見えないながらも「君を感じるよ」と話しかけてくれました。
冷たい物に触ること、絵を描くこと、寒さに手を擦り合わせる感触の素晴らしさを語り「こっちへ来ればいいのに」と誘うピーター。
サーカスでブランコ乗りをしているマリオンに恋をして「彼女に触れたい」と願うダミエルにとって、人間になることはワクワクすることばかりです。
とうとう人間となったその日、ダミエルは風景の色彩と感触に驚き気を失ってしまいました。
カシエルが人気のない場所へ運んでくれて、ようやく目覚めたダミエルの頭上に降ってきたのは、天界からの餞別の「鎧」。
歩くことすら嬉しく、通りすがりの人に色の名前を教えてもらいながら喜ぶダミエル。
「きっとコーヒーは美味しいだろうな」と呟くと「お金がないのか?」と心配され、コーヒー代を恵んでもらう事に。
鎧を抱えたまま入ったスタンドで、ダミエルが注文したのはブラックコーヒー。
初めて感じる味と香り、そして暖かさ…一杯のコーヒーはダミエルの心に深く染み渡ったようです。
撮影現場にやって来て人間になった報告をしたダミエルを歓迎してくれたピーター。
「お金がないだろう?」と尋ねるピーターにダミエルは「鎧を200マルクで売った」と得意げに告げます。
ところが「NYでは500ドルで売れたよ」とピーターに教えられ、彼も元天使だったことを知りました。
撮影が始まると言って去りかけたピーターに、もっと色々教えて欲しいと頼むダミエル。
「自分で発見するのが面白いんだ」というピーターの言葉に納得したダミエルは、全てを吸収しながらマリオンを探しに出かけるのでした。
他愛もない日々に隠れている美しさを教えてくれる本作。
見終わった後に飲むコーヒーは格別に美味しく感じることができます。