作品情報
タイトル「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(原題 Once Upon a Time in Hollywood)」
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 レオナルド・ディカプリオ,ブラッド・ピット,マーゴット・ロビー他
公開 2019年
上映時間 161分
落ち目の俳優とそのスタンドマン、ブレイク寸前のシャロン・テートのパートが交錯する作品。
ブラット・ピットがオスカーを受賞し、ブランディはパルム・ドッグを受賞した。
◇タランティーノ作にしてはアレが少なめ…?
タランティーノ映画では常に誰かが何かを口にしているか、食べ物の話をしている。
どういう暗示なのかはわからないけど、どうしても目がいってしまうし、おいしそうに見えてしまうのだ。
本作ではそんな食べ物シーンが意外と少なめ。
メインがリックの西部劇だったからなのか、はたまたリックがのんだくれだからなのか、おともはもっぱらアルコール。
それでもやっぱりそれらが目を引くところは、過去のタランティーノ作品と変わらない。
映画プロデューサーであり西部劇をこよなく愛する男・マーヴィンと会うことになったリック。
待ち合わせたお店のバーで、クリフとともにマーヴィンを待っていた。
リックは飲酒運転で事故を起こしてから免許が取り消しになっていて、どこに行くにもクリフに運転してもらっているのだ。
そんなスタントマン兼ドライバー兼お世話係のクリフがバーで飲んでいた、ブラッディ・メアリー。
ウォッカをトマトジュースで割ったこのカクテルは真っ赤な色が鮮烈で、おまけに大きなセロリが刺さっている。
タバスコをかけたセロリをかじりながら嗜むブラッディ・メアリーは実に美味しそうで、お酒が飲めなくてもちょっと飲んでみたくなる。
リックはどんな時も大体アルコールを口にしていて、楽屋ではスキットルで飲むし、家では自分でカクテルを作る。
そのせいなのか元々なのかはわからないけど、涙腺が緩めですぐに泣きそうになるという情緒不安定な感じが憎めない。
パーティーができるほど広い豪邸のプールで、フロートに座りラジオを聴きながらお手製のカクテル。
絵的には優雅でも孤独が深まりそうで、リックが泣いちゃうのもムリはないかもしれない。
◇名犬ブランディは大女優
リックの世話で忙しいクリフには、帰りを待ち侘びるパートナーがいる。
ボロくて汚いトレーラーハウスでクリフを迎えるのは、愛犬のブランディ。
いかにもよく食べそうなムキムキの肢体を誇るピットブルのブランディ、実は女の子なのだ。
帰宅したクリフにひとしきり甘えたあと、晩ご飯が出来るのをお利口に待つブランディ。
自分のご飯と同時進行でブランディのご飯を用意するクリフも、立派な飼い主だ(できればブランディの食器は洗ってやってほしい)。
ついうっかり鼻を鳴らしてしまったブランディに「飯抜きだぞ」なんて注意する姿も、しっかりしつけが出来ている良いコンビぶりが伺える。
ブランディの食事は、缶詰が2つにドライフードをふりかけたもの(できればドライフードは食器からはみ出さず中に入れてあげてほしい)。
クリフは茹でたマカロニにシーズニングを混ぜたインスタントのマカロニ&チーズで、食器には入れず鍋から食べるスタイル。
クリフの合図でまっすぐにご飯の元へ駆けつけるブランディ、ちぎれんばかりに振られたしっぽが愛らしい。
ボロくて汚いトレーラーハウス暮らしでも、クリフとブランディのコンビなら不思議と侘しく見えない。
クリフを演じたブラッド・ピッドは悲願のオスカーを受賞、そしてブランディはパルム・ドッグを受賞した。
パルム・ドッグとは当然カンヌ国際映画祭のパルム・ドールに由来する賞で、2001年から毎年映画で活躍した犬に贈られている立派な賞。
受賞した犬にはパルム・ドッグ特製の首輪が贈られるそうだ。
ちなみに授賞式に出席出来なかったブランディの代わりに、ブラッド・ピットが駆けつけて首輪を受け取ったらしい。
華のあるブランディの女優ぶりは見逃せない名シーンの1つなのだ。
◇終幕はマルガリータとともに
別々に進行していたストーリーが交差し始めると、いよいよ大詰め。
最終幕でリックとクリフが、そしてリックの隣に住む女優シャロン・テートの仲間たちが浴びるほど飲んでいたのはマルガリータ。
シャロンは友人たち4人でメキシカン・レストランへ。
登場したお店「エル・コヨーテ」は実在するお店で、実際にシャロン達が座ったその席で撮影された。
妊娠8ヶ月のシャロンは飲めないのでもっぱらソフトドリンク。
友人たちは盛り上がってマルガリータを合計19杯ほど空けたが、シャロンは気分が優れずお疲れ気味。
一方リックとクリフが2人で訪れたのはこちらも実在する老舗のレストラン「カサ・ベガ」。
映画の撮影で訪れたイタリアで結婚し、新妻・フランチェスカを連れて帰国したリック。
結婚したものの将来に不安を抱えたままのリックは、雇い続けることが出来ないとクリフに打ち明け、帰国後2人は別の道を行くことに。
お別れの儀式のように杯を重ねる2人は、まっすぐ座れないほどヘベレケに酔いまくる。
車を置いてタクシーでリックの家へ戻ることになった2人。
時差ボケ解消のため眠り続けるフランチェスカと、リック宅でフランチェスカを見守りつつクリフの帰りを待ちわびるブランディ。
帰ってきたクリフはひどく酔っているもののご機嫌で、ブランディを散歩に連れて行く。
ヒッピーから買ったLSD漬けのタバコを吸ったせいで完全にキマった状態だったが、クリフは散歩の後きっちりブランディのご飯を用意。
酔っていてもキマっていても帰宅後はブランディを優先する、まさに飼い主の鑑なのだ。
リックの家にもブランディのご飯は常備してあったようで、いつもと同じ銘柄の缶詰を棚から取り出すクリフ。
光や匂いに敏感になっていたクリフは、ブランディの缶詰の肉をペロッとなめていた。
リックの方も酔った勢いで熱心にフローズン・マルガリータを作り始める。
完全に自分の世界へ入り込んでしまったリックはまたしてもプールにフロートを浮かべ、1人ご機嫌で歌を歌うのだ。
クリフの出会ったマンソンファミリー、クリフとブランディ、リックとフランチェスカ、シャロンと友人たちが揃えば、衝撃のエンディングはすぐそこに。
怒涛の最終幕を楽しんだあとは、マルガリータでじっくり余韻に浸りたい。
デリシャスなシネマ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」もあわせてどうぞ。