「リトル・ミス・サンシャイン」について

作品情報

タイトル「リトル・ミス・サンシャイン(原題 Little Miss Sunshine)」

監督 ジョナサン・デイトン,ヴァレリー・ファリス

出演 グレッグ・キニア,スティーヴ・カレル,トニ・コレット,ポール・ダノ,アビゲイル・ブレスリン,アラン・アーキン他

公開 2006年

上映時間 100分

アルバカーキで暮らすー家の末娘がミスコンへ出場することになり、一家でカリフォルニアを目指すロードムービー。

家族も、バスも、全てが輝いてまさに”サンシャイン”のような1本。

◇残念な一家を演じる実力派揃いのキャストたち!

細かなジャンルとしてはブラックコメディになるんだろうか。

エドウィンじいちゃんの口は悪いし、ヘロインは使うし、ほのぼのファミリーロードムービーではなさそう。

それでもやっぱり、どこまでも無邪気なオリーヴと、何があってもオリーヴを愛する家族の姿は底知れずキュートなのだ。

驚きなのは監督のジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス夫妻、そして脚本を務めたマイケル・アーントは共に本作がデビュー作だということ。

監督夫妻は元々レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどのMVの製作・監督を手掛けてきた人たち。

初の映画作品となる本作で高評価を得て、第79回アカデミー賞作品賞にもノミネートされた。

脚本を手がけたマイケル・アーントは完全なる初の執筆作だったが、めでたくアカデミー賞脚本賞を受賞!

本作を象徴するワーゲンバスは、マイケル・アーントの少年時代の思い出から着想を得ているそうだ。

一家のママ・シェリル役のトニ・コレットは、「シックス・センス」でハーレイ君のママ役を演じ、アカデミー賞助演女優賞を受賞した女優。

一家のダメパパ・リチャード役のグレッグ・キニアも、1997年の「恋愛小説家」でアカデミー賞助演男優賞・ゴールデングローブ賞助演男優賞のダブル受賞を果たしている。

プルースト学者で人生に絶望中のフランクを演じたスティーヴ・カレルは、脚本家・プロデューサーでもあり、俳優かつコメディアンでもあるという多彩な人だ。

1番大暴れだったグランパ・エドウィン役のアラン・アーキンは本作の圧巻のキャラクターでアカデミー賞助演男優賞を受賞。

キレッキレのグランパぶりが最高だった。

家族との会話も筆談で済ませてしまう、トレーニング姿が似合わないお兄ちゃん・ドウェーン役には、ポール・ダノ。

個人的に好きな俳優ランキングではかなり上位に入れたい俳優だったりする。

みんなのアイドル・オリーヴを演じたのはアビゲイル・ブレスリン。

2002年に「サイン」でデビューしたばかりだったアビゲイル。

4年後に公開された本作で史上4番目となる若さでのアカデミー賞助演女優賞ノミネートという快挙を成し遂げた。

他にもちょこちょこ出てくる俳優がブライアン・クランストンだったり、ディーン・ノリスだったりで「Breaking Bad」じゃん!!と嬉しくなる。

「24」じゃん!「CSI」じゃん!となる人たちが続々登場する、キャスティングが絶妙で豪華な映画なのだ。

◇ケンカしながら仲良く食べるフーヴァー家の食卓

物語の始まりは、フランクがフーヴァー家に引き取られるところから。

ちょうど夕食なのよ、とシェリルが用意していたのはフライドチキンと茹でたコーンにサラダという南部の定番メニュー。

大きなバーレル入りのチキン、不揃いなコップで飲むスプライト、食後には大人たちがケンカしながらもアイスの箱をボンっと食卓に。

予想外のフランクの参加だったり、オリーヴのミスコン出場が決まったために一悶着あったりしながらも、「いつもの食卓」という雰囲気。

もう1つの食卓は、ミスコン参加のためカリフォルニアへ向かう一家がダイナーで朝食をとるシーン。

みんなで並んで座りメニューとにらめっこして決める朝食は、予算が1人4ドル以内とのこと。

グランパのメニューはやたら高カロリーな”ボリューム定食”に、さらにベーコンを追加でオーダー。

お兄ちゃんはサラダしか頼まなかったり、フランクはフルーツ・プレートというヘルシーな注文をする中、オリーヴはワッフルとアイスをチョイス。

でもリチャードが「ミスコンで優勝する子はアイスなんて食べない」なんて言ったせいで、「誰か食べてくれる?」としょんぼり。

そんなオリーヴのため、立ち上がったグランパ。

じゃあ食べてあげよう!こんな美味しい物を食べないなんて!と羨ましがらせ、フランクやドウェーンも次々と便乗。

ついにオリーヴは食べちゃダメ!とアイスを奪還するのだけど、一口食べた時の嬉しそうな顔がなんとも子供らしい可愛さで満ちている。

メニューにアラモードと書いてあったせいで始まった、フランクのアラモードの語源についてのウンチク。

アイスを食べると太ると言うリチャードに「俺は肉のついた女の方が好きだ」とズレた主張をするグランパ。

ごちゃごちゃと言い合う大人たちは、なんだかんだでオリーヴを愛するという団結力で繋がっているのだ。

◇フーヴァ一家を象徴するワーゲンバス

繰り上がりで予選を通過し、ミスコンに参加することになったオリーヴ。

当然のように全員がコンテストを見届けようとするものの、フーヴァー家の家計は火の車だった。

仕方なくみんなで長い長いドライブをしようとワーゲンバスに乗り込むのだけど、これがまたとてつもなくボロい車なのだ。

見た目は可愛らしく、一家全員が快適に乗れる黄色いワーゲンバス。

さすがにリチャードだけに運転をさせるわけには…とシェリルが交代を申し入れるが、エンジンがかからなくなってしまう。

シェリルの腕が悪いからだ…と思っていたリチャード、残念ながら悪かったのは車の方だった。

修理工場まで運んでもらうものの、パーツが特殊なため数日かかると言われてザワザワし始める一家。

修理工は押しがけという手があるよ、と車をみんなで押して動かしながらエンジンをかけるテクを伝授してくれた。

徐々にスピードが上がっていく車に1人ずつ乗り込むという、どこまでも情けなく微笑ましい姿の家族たち。

途中のパーキングエリアではオリーヴを置き去りにしてしまい慌てて戻るものの、車を停車させるわけにはいかない。

走って飛び乗るオリーヴと、オリーヴを必死で捕まえる一家の姿には「家族ってなんてかっこ悪くて愛おしいんだろう」と思わされてしまった。

急に前に割り込まれて驚いたリチャードはクラクションを鳴らすが、強く叩いたせいなのか音が鳴り止まなくなる。

情けなくヒョロヒョロ音をたてながら一家を乗せて走るワーゲンバスは、みっともないのにどこまでも愛くるしく感じてしまう不思議な車だ。

結局のところ最初から最後まで、この家族の誰もが”勝者”にはなれない。

それでも失敗したっていいじゃないか、”敗者”だからなんだっていうのだろう。

見知らぬ他人の評価なんて、一時だけのこと。

何度失敗して何度喧嘩したところで、彼らは永遠の絆で結びついていて、お互いを誇りに思っているのだから。

「みんながいるから、大丈夫だよ」と背中を押してくれるフーヴァー家の笑顔は眩しく、見るたびに”サンシャイン”のようなパワーをわけてくれるのだ。

デリシャスなシネマ「リトル・ミス・サンシャイン」もあわせてどうぞ。

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