「ゴーストストーリーズ 英国幽霊奇談」について

「ゴーストストーリーズ 英国幽霊奇談」について

作品情報

ゴーストストーリーズ 英国幽霊奇談(原題 Ghost Stories)

監督 アンディ・ナイマン,ジェレミー・ダイソン

出演 アンディ・ナイマン ポール・ホワイトハウス アレックス・ローサー マーティン・フリーマン 他

公開 2017年

上映時間 98分

偽霊能力を暴くことが生きがいの男が、3つの超常現象を調べていくうちに気妙な現象に巻き込まれていくホラー作品。

舞台劇として成功をおさめ、映画化に至った。


◇上質なブリティッシュホラーは舞台が原作!

特に作品情報も見ず、期待もせず、友達のお勧めを2.3回スルーしてからようやく見た本作。

最初からゴーストですけど!って言われるとあんまりね…となかなか積極的に見れなかった。

ところが、イギリスの作品はバチッと相性が合う時がある。

イギリスのほの暗い、どこか閉鎖的な匂いが日本と似通っているせいか。

全体的にドシっとした重厚な背景が心にズシっとくるせいか。

アメリカの幽霊よりはイギリスの幽霊の方がシットリしてそうだな、と質感重視で鑑賞できた新鮮味のある1本。

タイトルにあるとおり幽霊にまつわるストーリーなのだけれど、幽霊シーン(?)もなかなかの迫力。

監督・脚本・主演を務めたアンディ・ナイマンと、ジェレミー・ダイソンによる2010年の舞台劇が、もともとの作品らしい。

ブリティッシュ魂を守り抜くためにアメリカの映画会社を断り、映画化のために18ヶ月かけて脚本を練り直したという熱の入りよう。

オバケなんてないさ!とインチキ霊能者の手口を暴く番組に精力を注ぐ、フィリップ・グッドマン教授。

消息不明だった憧れの超常現象研究家、チャールズ・キャメロンから手紙が届き、指定された場所へ赴く。

チャールズは人里離れたキャンピングカーで1人暮らしていて、明らかに具合が悪そう。

その上「お前のやってること無駄だから!俺のやってきたことも全部無駄だったぜ!」とのっけから妙にケンカ腰。

混乱しつつも「超常現象なんてないから!幽霊とかいないから!」と返すフィリップに、チャールズは「じゃあこれ調べて来いよ!」と資料を投げつける。

チャールズは戸惑いながらも早速、3つの資料の中から1人目の警備員・トニーの元へ取材に向かう。

ケース1の夜間警備員・トニーを演じたのは、ポール・ホワイトハウス。

コメディ畑のベテランで、ジョニー・デップともマブダチという渋い俳優。

孤独でとっつきにくいトゲのある人物が心霊現象に困惑させられる様子を、安定の演技で魅せてくれる。

このトニーのパートのジャパニーズホラー感が素敵だった。

あとはもう素直にただただ見ていくだけで面白い。

アレコレ考えずに、素直に、夜見るのがオススメ。

◇アレックス万歳

ケース2に登場するオカルトマニアの少年サイモン・リフキンド役には、アレックス・ローサー。

「イミテーション・ゲーム」で若き日のアラン・チューリングを演じ、早くも頭角を現した期待度No. 1の若手俳優。

ドラマシリーズ「このサイテーな世界の終わり」でサイコパスな少年・ジェームスを熱演中。

本作の役どころは大学受験に落ち、親の車を勝手に無免許で運転した挙句ひき逃げをしてしまうという、どこをとっても冴えない少年。

フィリップが訪ねたサイモンの部屋には無数の悪魔のイラストがビッシリ張り付けてあって、彼、明らかに病んでいる。

病んでいる人の常なのか、サイモンも「僕はおかしくない」と言い張り、その夜に起きたことを詳細に語りはじめる。

この病みっぷりというか、普通に話しているようで全然普通ではない感じとか、超常現象に巻き込まれ怯える表情とか、イチイチ最高な彼。

何をしていても笑っているように見えるチャーミングな顔つきが存分に活かされている。

本当に怯えた人間は、キャー!でもギャー!でもなく、フヒヒヒ…!となってしまうという演技が素晴らしく絶妙。

幽霊がどうこうよりも、彼の怯え方・病み方が冴え渡っていて釘付けになってしまった。

個性的な演技ができる俳優さんに出会えると映画は数倍楽しい。

アレックス・ローサーの今後の活躍、要チェック!!

◇ニャンニャンの缶詰はおそらくビーフ味

本作には残念ながらこれと言って食べ物が出てこない。

ホラー映画ではきっと美味しそうな食べ物はご法度なのだろう。

この作品に出てきたら、どんな食べ物でもしっとりしそうな気もする。

唯一出てきたしっとりした食べ物は、ケース3のマイク・プリドルのパート。

決め手に欠くまま、最後の調査へ向かうフィリップ。

金融業のマイクの元を訪ねるものの、マイペースに話を勧めるマイクに振り回され気味。

マイク曰く、とある日に妊娠中の妻に異変が起きたため病院へ送り、1人帰宅。

突然のポルターガイスト現象に放心状態になったところに病院から電話が。

予想はついたものの、マイクは悪いニュースを告げられて…というもの。

マイク役を務めたマーティン・フリーマンは、日本では「SHERLOCK」のジョン役で大人気に。

そのせいか本作もマーティン推しのイメージが強くて、見る前は彼が主演なのかと思っていた。

そんな取り扱いだけが唯一ちょっと残念だったけど、彼の演技はもちろん最高。

笑いすぎで鼻がンガッ!って鳴るところとか、小芝居がコミカルで愛嬌のある俳優だ。

そんなマーティン演じるマイクが飛び切りの笑顔で取り出したのが、猫用の缶詰。

「ニャンニャンの缶詰だよ〜!」と開けた缶詰の中身は角切り肉で、多分ビーフ味だろう。

どこらへんで出てくるかは是非見て確かめてほしいところ。

エンディングにはハロウィンの定番曲「モンスターマッシュ」。

空気を読まず陽気にイカれた感じで流れてくるところが絶妙で、これ以上ないほどマッチしている。

最後までゾクゾクさせてくれる極上のブリティッシュムービー。

見なきゃわからない面白さがギュギュッと詰まっているので、予備知識なしで出来るだけ部屋を暗くしてお楽しみあれ。

デリシャスなシネマ「ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談」もあわせてどうぞ。

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