どんな状況でも変わらないのは
母親の愛情。
ビアンカがクリストファーに教えたのは
ニシンのソテー。

Story
1973年、スウェーデンのストックホルム銀行に、カイ・ハンセンを名乗る男が襲撃にやってくる。
行員を人質として立て篭もるカイは、警察に次々と要求を出すのだが-。
長髪に革ジャン・背中には星条旗といういでたちの、アメリカを夢みる男がやってきたのは、ストックホルムにある銀行。
大きな鞄から取り出したマシンガンで、派手に銀行強盗を始めると宣言してみせます。
逃げ惑う客たちと、とっさに床に伏せた銀行員たち。
その中で唯一冷静に行動したのは、女性行員のビアンカでした。
即座に警報を鳴らし外部へ知らせるとともに、机の下へ潜り込んだビアンカ。
ビアンカの行動を知った強盗は怒り狂う…かと思いきや、ビアンカを褒めて警察署長に電話をかけるようにと告げます。
言われたとおりに電話をして銀行強盗の人質となったことを知らせますが、滅多にない事件のせいか、警察署長の対応もなんだか頼りないもの。
犯人を刺激してイライラさせるばかりで、人質となったビアンカや同僚のクララも不安を募らせるばかりです。
強盗の要求とは裏腹に、現場へやって来たのはなぜかビアンカの夫・クリストファー。
僕を代わりに人質にしてくれ!などと感情的に訴えるクリストファーですが、強盗から即座に却下された上、軽くあしらわれてしまいます。
すっかり動揺しているクリストファー、実際に人質となってしまったビアンカは正反対で、肝の座った立派な姿を見せるのでした。
ビアンカがなにより先に心配したのは、2人の小さな子供たちのこと。
事件のことは子供たちに知らせないでほしいと言い、帰って夕食を作るようにクリストファーに告げるのです。
クリストファーや警察をすぐに下がらせようとした強盗に「すぐに終わるから」とお願いし、クリストファーにメモを取るよう急かすビアンカ。
ビアンカがクリストファーに教えたのは、子供たちに食べさせるニシンのソテーのレシピでした。
君はいつ帰ってくる?なんて間抜けな質問をしたり、夕食の準備さえしたことのない夫に、淡々と手順を説明するビアンカ。
「焼き加減を間違えると食べないから」と言いながら静かに涙をこぼす姿は、命懸けで子供を守る母だけが持つオーラを放っていました。
結局夕食は冷凍のミートローフで済ませてしまったクリストファー。
人質となって尚子供たちを案じるビアンカとの温度差が、くっきりと現れてしまうのでした。
スウェーデンの家庭でよく食べられるニシンのソテーには、コケモモジャムとマッシュポテトが添えられるのが定番。
ビアンカもニシンは骨を処理し、ポテトは茹でて調理済みとすぐに食べられるよういつでも下準備を欠かさなかったようです。